ピレリスーパー耐久シリーズ2019第3戦は、5月31日〜6月2日に富士スピードウェイ(静岡県)において、シリーズ最長の24時間レースとして開催。#1 GTNET GT3 GT-Rは、フロントローからスタートして、トップ争いを延々と展開。残り4時間の時点でライバルにトラブルが発生しても自分たちのペースでレースを続け、2位に27周の大差をつけ優勝。801周、3,654.963kmを走破し、大会連覇とシリーズ連勝を記録した。
開幕戦を不幸なアクシデントで落としたものの、第2戦で優勝したディフェンディングチャンピオンは、5月の富士テストを車両のメンテナンスに充てたことでスキップ。しかし万全の車両で富士に乗り込んだ。この富士24時間レースはボーナスポイントがつくため、シリーズ連覇のためには是が非でも上位でゴールしておきたいところ。目標は大会の連覇だった。また24時間耐久レースのために、昨年までのライバルであり今年はGT-RでSUPER GT/GT300クラスに参戦する平峰一貴を4人目のドライバーに迎えた。
富士は1.5kmにも及ぶストレートを持つ高速コースだが、中盤以降の区間はテクニカルなコーナーが連続する上りとなり、ここをいかにリズミカルに駆け抜けられるかがポイントとなる。今回は全8クラスに48台がエントリーしたが、ST-Xクラスは4台(GT-Rが3台、アウディR8が1台)のみと代数的にはやや寂しい。#1 GT-Rは第2戦優勝で30kgのハンディウェイトを搭載していることもあり、ラップタイムやタイヤの摩耗に影響が出る可能性も高い状態での参戦となった。20時間僅差で競い合ったのは、豪華メンバーとなった#300 TAIROKU RACING GT-R GT3(山口大陸/ハリソン・ニューウェイ/本山哲/高木真一/ニコラス・コスタ)だった。
コースサイドのグリーンも眩しい初夏の富士。公式予選の行われた31日から、コースサイドにはキャンプをしながら24時間の耐久レースを楽しもうというファンがテントを立ててスタンバイ。今年も100Rイン側やダンロップコーナー周辺には数多くのテントが見受けられた。
公式予選はA、Bドライバーのベストタイム合算で争われる。まずAドライバー予選で浜野が1分40秒144で2位につけた。続くBドライバー予選で星野が従来のコースレコードを更新する1分39秒569でこちらも2位。合算で2位となり、開幕戦から続いていた連続ポールポジションは獲得ならなかったが、#300 GT-Rに続きフロントローを確保した。Cドライバー予選では藤波がDドライバー予選では平峰が走りセッティングを確認。夕刻のフリー走行は車両のメンテナンスに充てるためにスキップする余裕を見せた。
1日の決勝レースは、薄曇りで気温22℃というコンディションの14時59分にスタートした。ステアリングを託されたのは星野で、序盤はポールからスタートした#300 GT-Rの本山を追いかけ回した。しかし、二人の差は徐々に離れていった。最初のピット作業はトップの2台が同じ周にピットイン。ミスなくピット作業を済ませて藤波がコースへ。トップの#300 GT-Rは1コーナーで他車両と接触してスピン。さらにピット作業時の違反がありペナルティストップを課せられる間に、藤波がトップに立った。
藤波はトップを守り日没後にピットインして浜野に交代。さらに夜の帳が下りると平峰へ。夜間走行は星野を挟んで、その後は若い藤波と平峰がラップを重ねていった。トップ争いを繰り広げる#300 GT-Rは深夜に義務付けられた10分間の”メンテナンスタイム”を実行。これで平峰がトップに浮上した。
夜が明け周囲が明るくなった朝の5時半過ぎ、藤波がピットインして浜野に交代。ここでチームは10分間の”メンテナンスタイム”を使い、車両のチェックとパーツ交換を実施した。すっかり明るくなったが、ピットインのタイミングでトップが入れ替わる一騎打ちの展開は続き、レースは終盤を迎えた。またその後のピットインのタイミングでは、偶然にもFCY(=フルコースイエロー、全車50km/h以下で追い越し禁止)となり、タイムロスは最小限となる幸運もあった。
レースも残り5時間となった11時ごろ、トップ争いをしていた#300 GT-Rがピットイン。そして駆動系のトラブルのためにピットガレージに入れられた。これで楽になった#1 GT-Rだったが、ペースを緩めることなく決められたラップタイムで周回を重ねた。レースも残り1時間を切った14時18分、藤波がピットインして浜野へ交代。浜野は最後までミスなく周回を重ね、801周、3,654.963kmを走り切って歓喜のチェッカー。ウィニングラップを終えて星野、藤波、平峰を乗せてピットロードを凱旋走行で表彰台下に戻ってきた。富士24時間を連覇して、シリーズ戦も連勝。これで79点を追加して、一気にポイントリーダーに駆け上った。
「チェッカーを受けさせてもらい感激しましたが、ジェントルマンドライバーとしては内容に疲れました。ワンミスも許されないような展開で途中で逃げ出したい気持ちでした。それでもレースは勉強になったし引き出しが増えたと思います。そして何よりチームの雰囲気が良いのが一番です」
「24時間レースを連覇できたことはすごいです。チーム発足時から関わっていますが、当初はトラブルが出るケースもありましたが、ここ2年は、ノーミス、ノートラブルで勝てるようなこんな素晴らしいチームになったのは感慨深いです。このレースに勝ちたくて仕方がなかったので、本当にうれしいです」
「終盤までどうなるのか分からない展開で、精神的に疲れました。300号車には速さで負けていたと思いますが、FCYにも助けられたし運が良かったです。まるで水のないダムに雨が降ったという感じです。ミスがなかったわけではありませんが、メカニックたちが力を入れてくれた結果です」