ピレリスーパー耐久シリーズ2019第2戦は、4月27〜28日にスポーツランドSUGO(宮城県)において、3時間レースとして開催。#1 GTNET GT3 GT-Rは、ポールポジションからスタートして、FCYやセーフティカーランを巧みに利用して理想的なレース展開に持ち込み今季初優勝。シリーズ連覇に向けて、シーズンが”開幕”した。
前年チャンピオンの証であるゼッケン”1”を付けた#1 GT-R。開幕戦は順調にレースを進めていた中盤にバックマーカーと接触。車両の修復に時間がかかり6位という結果だっただけに、今回は是が非でも上位で完走してポイントを多く加算したいところ。次の富士24時間を有利に戦うためにもサクセスウェイトは多く搭載したくはないが、勝つチャンスがあればそれを確実に拾うことも考慮してレースに臨んだ。
SUGOは東北随一、仙台近郊のアップダウンに富んだコースで、コース幅が狭くアクシデントも多く発生しがちなこともあり、”魔物が棲む”と言われる。レース参加台数が合計54台と多く、ピットの数も少ないことから、32台のGr.1(ST-X、Z、TCR、1〜3クラス)、22台のGr.2(ST-4、5クラス)とふたつのグループに区分してそれぞれのグループで3時間レースを行うこととなった。また鈴鹿で確認できたスタッフの高い作業精度の確認を、狭いピットでもチェックする必要があったが、セットアップは順調に進んでいた。
東北地方は練習走行の行われた金曜から冬型の天候となり、冷たい雨に見舞われた。雨は予選日の27日の午後まで残り、公式予選もコースはウェットコンディション。気温は6℃程度と冷え込んだ。GTNET GT3 GT-Rが区分されるST-Xクラスには3台のGT-Rを含む6台が参戦。特に今回はNISSAN GT-R NISMO GT3の2018年モデルを投入したチームがあり、それに対してどの程度の差があるのかを確認する必要があった。
27日昼前に始まった公式予選は、A、Bドライバーのベストタイム合算で争われる。ジェントルマンドライバーである浜野は、セミウェットコンディションながらスリックタイヤが使えるかどうかという微妙な路面コンディションとなったAドライバー予選でレインタイヤでアタックし、1分29秒551でトップタイムをマークした。続いて行われたプロドライバーのBドライバー予選では、星野がスリックタイヤで1分20秒978で2位につけ、合算では2戦連続となるポールポジションを獲得した。旧型のGT-Rではあるが、新型GT-R(1分20秒538)に対抗できるポテンシャルを確認することができたのは収穫だった。
28日の決勝日は朝から爽やかな青空が広がった。朝の時点では寒かった気温も上昇し、ピットウォークの行われた昼前後には14℃程度となり、風はやや冷たいもののゴールデンウィークらしい天候となった。13時18分、ペースカーが隊列から離れ3時間のレースが始まった。スタートを担当したのは、総合トップからのスタートが初という浜野だった。
浜野はスタート直後から後続を引き離す展開に持ち込んだ。一定の距離を確保するとそのまま自分のラップタイムを守り順調に周回を重ねた。開始わずか15分ほどでコースアウトして身動きの取れない車両があり、時速50km/h以下で追い越し禁止となるFCY(フルコースイエロー)に。ここで浜野はピットインして少量ながらガソリンを給油し隊列に戻った。こうしたFCY時やセーフティカー(SC)導入時にピットインして給油をすることはこれまでも行っており、メカニックもミスなく作業を終わらせた。さらに24周でピットインして浜野から星野へ交代。タイヤ交換、給油を行った。
レーススタートから1時間10分ほどが経過したころ、1台の車両がヘアピン先でストップ。これで2度目のFCYとなった。このタイミングで星野はピットインして給油のみを行った。この時点で星野は3位に。やがて2018年モデルの#300 GT-Rが5位から追い上げを開始。星野もここは無理をせずライバルを先行させた。3台でトップ争いを展開していた60周で星野はピットイン。ここで藤波に交代し、タイヤ交換と給油を行った。ほぼ同時に最終コーナーで接触事故を起こした車両がヘアピン先でマシンを停めてしまい、ここでセーフティカー(SC)が導入された。3位を走る藤波は同一周回である#300 GT-R、#244 RC F、#777アストンマーチンと、終盤に優勝を争う展開となった。
68周目に藤波は#244 RC Fをかわして2位へ。さらに72周でトップの#300 GT-Rが最後のピットインをしたことでトップに返り咲いた。80周目に最終コーナーでクラッシュした車両があり二度目のSC導入。解除直後に藤波がダッシュをかけて2位を引き離し、そのまま107周で3時間レースのトップチェッカー。うれしい今季初優勝を遂げ、今シーズンが”開幕”した。
「初めてのオーバーオールでのスタートだったのでそれなりに緊張しました。僕はミニマム36分という担当でしたので、その間にFCYがあればスプラッシュ(給油)をやるという作戦でしたから、そのとおりにしましたし、そこまでタイヤを使い切ってリードを広げるということができました。この優勝で流れにも乗れたし、次の富士24時間も去年同様勝ってチャンピオン獲得につなげたいです」
「前回があのような結果(バックマーカーと接触して6位)だったので、最低でも表彰台を狙って、チャンスがあれば勝つつもりでした。今回もFCYのタイミングでスプラッシュ(短時間の給油)をするということでしたし、2回目のピットイン時は偶然セーフティカーランになりましたし、作戦も全部決まりチームの総合力で勝てました。これでシリーズの流れを引き寄せられたのかなと思います。次の富士24時間も優勝を狙います」
「今回は2つのグループに分けて少ない台数でのレースでしたから、そんなにFCYやSCが出るとは予測していませんでしたが、細かいピットワークと戦略がうまくいったレースでした。落としたレースのすぐ次のレースで勝てたというのは良かったです。SUGOは勝つつもりでいると大体ロクなことがありませんから。富士はまた良い緊張感があると思いますし、テストにはメンテナンスの都合で参加できないので昨年のデータを生かしてしっかり戦いたいと思います」